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diary 大浦信行監督日記
2007年03月20日 17:21
監督ノート 百合花日記(ゆりいかにっき)
3月19日(月)晴。
ベランダの大きな鉢に植えてある、たんぽぽの花がもうすでに満開だ。
このたんぽぽは去年4月頃、近くの田んぼの畦道(あぜみち)から10株ほど取ってきたものだ。
この一年間、絶やさず水をやり、強力な肥料の油カスもやったりして、大切に育ててきた。
冬の間は枯れたようになっていたが、この2月初め頃から葉っぱも生き生きと蘇(よみがえ)り、黄色い花を咲かせ始めた。もう50個位の花が咲いている。
花が咲き終わると、茎がみるみる間に延びて、花は柔らかい綿毛となり、空高く飛んで行こうとしている。
篠田(博之)さんはいつ会ってもニコニコしている。
そのニコニコ顔で、こちらの緊張を一瞬のうちにときほぐし、リラックスした雰囲気をつくり出してしまう。
篠田さんは、月刊「創」の名編集長。出版業界でも有名な人。「噂の真相」がもうすでに廃刊となった今、「創」だけが硬派の牙城を死守している。最近は、「CS・朝日ニュースター」のキャスターをやっている。この番組には日替わりで、重信メイさんも週2回キャスターとして出ている。
篠田さんとのトークも、当然この映画におけるメイさんの存在感に話が及ぶ。
篠田さん、「この映画の重信メイ、いいですねぇ。
全く新しい重信メイの像を引き出しているよ。
メイさん随分得したと思うよ。それに奇麗だね。
この映画を契機に、彼女、映画に進出しないのかなぁ。
そんな話、他から来てないの。実は『朝日ニュースター』のスタッフにも彼女、すこぶる評判が良いんですよ。
大浦さん次、メイさんを使う予定はないの」。
と、篠田さんはどんどんぼくに質問をしてくる。
ぼく、「うーん、そーねぇ。
実は次の次に予定している映画、『筑豊』にメイさんをお願いしたいとは思っているんですよ。『現代の巫女』として、筑豊の路地に突然表われるような役。筑豊という磁場に新たな光と視点をつくり出していく役回り。
アラブと日本に引き裂かれた彼女の二つのアイデンティティー。これは誰でもが知っているメイさんだと思う。
今回の『9.11−8.15』では、朝鮮半島に向かう彼女の無意識が希求する、もう一つのアイデンティテイーを描きたかった。だから『9.11−8.15』には三つの色彩を持った重信メイがいる。
朝鮮半島に向かうメイの無意識を『筑豊』ではさらに抽出して描きたいんだ」。
「なるほどねぇ」と篠田さん。
しばらく話が進んだ後、篠田さんの口から以外な名前が出た。
「見沢知廉のような人物を、我々雑誌はもっともっと取り上げていかないといけない
んだけどねぇ」。
見沢知廉については、3月6日付けの日記でも触れたけれど、彼は鈴木(邦男)さんのところの、一水会のメンバーだった人。殺人罪で12年間服役し、獄中で「天皇ごっこ」という小説を書き、それが、針生さんが議長をやっていた新日本文学会の文学賞に入賞した。二年前に46才の若さで自殺した。
「いづれ見沢知廉の映画をつくりたいと思っているんですよ」と、ぼくは云った。
「えっ大浦さん、見沢やるの。それは是非やってほしいなぁ」と彼。
「ええ、必ずつくりますよ」と、ぼく。
「いいねぇ、是非やってよ」と彼。
篠田さんと話をしていると、矢継ぎ早に言葉が出てきて、どんどん進んでいく。お客さんを前に、舞台の上でトークをしているのを一瞬忘れて、二人で話し込んでいく。これで酒でもあったら、朝まで話すね。
何かそんなリラックスさせる柔らかでほんわかした空気を、篠田さんは体から発散させていた。
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