日本心中

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diary 大浦信行監督日記

2007年01月29日 11:11

監督ノート 百合花日記(ゆりいかにっき)

1月28日(日)快晴。
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8時40分起床。ベランダと室内の鉢植えプラントに水をやる。心の中でそっと話し掛けてみる。
鉢の数がすでに60個程にもなってしまった。もうこれ以上は買わないときめながらも。花屋の前を通ると、思わず立ち止まって眺めてしまう。そして千円以下の植物だと、つい買ってしまう。
終日、読書。「閔妃暗殺」。とにかくおもしろい。
夜、大根とチキンの煮付けをつくる。
大根を5cm程の厚さに切り、下茹でし、ざるに開け、さます。
鍋に昆布を敷き、下茹でした大根を重ねていく。そこに鰹節のだし汁をひたひたになるまで入れ、中火で煮る。煮立ったら弱火にし、お酒、みりん、醤油で味を整える。ぶつ切りにしたチキンを入れ、20分程煮る。
出来上がった後、鍋ごと毛布でくるんで保湿すると、大根にゆっくりと味が染み込んいく。
大根はすぐれものだ。根が素直ときているから色々な料理に適応してくれる。旨かった。今回の映画に出ている、韓国の抵抗詩人・金芝河(キム・ジハ)の言葉ではないけれど、
「飯は天です。天を独りでは支えられぬように、飯はたがいに分かち合って食べるもの。」という言葉の一節が思い出されてくる。
金芝河と云えば、この映画の中での彼の存在感は圧倒的だった。
美術・文芸評論家の針生一郎氏と、アラブと日本に引き裂かれた自己のアイデンティティーを捜し求める重信メイさんを主人公に据えながらも、金芝河の言葉の数々が、通奏低音の響きとなって、映画全体の基調を形成していく。
対談と風景と劇中劇のつづれ織りによって構成された、「神話的時間」としての映画が、彼の言葉と呼応し、ぼくたちを異次元へといざなっていく。
すると世界は、薄ぼんやりした像に交換され、次第に存在の意味を消滅させていくだろう。それに変わって、東アジアの恊働する文化の地平が指し示されてくる。
そのようなプロセスを経て、ぼくたちの無意識の闇に潜む、「死のエロス」としての「白い陰」が屹然(きつぜん)と立ち昇ってくる。
その時、世界はぐらりと揺らぐに違いない。

大浦信行

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